頭・心・手・口のかけくらべ / 育休40週目

頭　心　手　口
この世に生まれでてから　
よーいドンでいっせいに走りだす
抜きつ　抜かれつ
４選手のかけっこの順位は
ひとつひとつ歳を重ねるごとに
たえまなく入れ替わっていく

手　心　口　頭　の順でのこのこ歩く
０歳の息子をみていると
すぐに手がうごく
あれもこれも触りながら
きどあいらくの心が芽生えていく
ことばはまだ話せないけれど
口をぱくぱくさせながら
きもちいい音を探っている
頭はたけのこみたいに
じっくり根を張っている

心　口　手　頭　の順で飛びまわる
１０代の思春期を思い返すと
心ばかりが先へいく
ことばは覚えて口だけは一丁前
けれど心に頭が追いついていなくて
じぶんの気持ちを
消化できないときは　
おもわず手がでてしまう
頭はまだまだ根を張っている

頭　心　手　口　の順で突きすすむ
２０代で社会人になると
頭が心に追いつき
じぶんはなにものなのか
どこへ向かうべきなのか
頭でっかちにもがき悩みながら
ひっしに手をうごかし
仕事をおぼえていく
ホンネを口にだすことは
だんだん慎重になっていく

口　頭　心　手　の順で駆けていく
３０代で一人前になってくると　
ペラペラと口が先走る
「理由は３つあります」
と言ってから追いかけるように
頭で考えうまく話せたときは
じぶん自身にびっくりしたことも
心よりも先に　口がうごく　頭がうごく
そのぶん手をうごかすことは
だんだん減っていく

手　心　口　頭　の順で進んでいく
４０歳手前で父になると
どんなに頭でかんがえても
わからないことばかり
手をうごかし　心をうごかし
こどもにゆっくり語りかける
頭ではわからないことも
そのまんまの姿で
抱きしめられるようになる

この先もかけっこの順は
入れ替わっていくのだろう　
もしも　からだが
ちぐはぐな方向にゆこうとして
じぶんのからだがじぶんで
ないような気がしたときは

全身の声を聴いてみること
頭が選ぶことばだけでなく
心が欲しがることば
手が触れたくなることば
口がきもちいいことば
いろとりどりなことばたちを
食事のように全身で受けとり
巡らせていくこと

やがて　頭　心　手　口を
つなぐバトンとなって
その年齢その年齢にあわせた
あたらしい平衡状態へと
導いていけるはず