世界中がじぶんのコンテンツになる「じぶん発のデザイン論」

 

圏外コピーライターの銭谷侑です。
今回は、妻とともに続けている「じぶん発のデザイン論」というワークショップ活動の話をします。

2016年から、いくつかの美術系高校や大学で講義をさせてもらっているのですが、デザインとは関係のない学生や社会人にも役立つフレームワークだと思い、その内容を公開します。

 




スポンサーリンク

「じぶん発のデザイン論」が生まれた背景

 

「じぶん発のデザイン論」が生まれたのは、ずばり「コミュ障」だったからです。夫婦ともに、電通では珍しい”筋金入りのコミュ障”だったので、じぶん発で企てないと仕事がこなかったのです。

けして「学生に教えたい」なんてかっこいい理由ではなく、じぶんがクリエーティブ業界で生き残るために、仕方なく生まれたのが「じぶん発のデザイン論」でした。

クリエーティブ業界は、いわゆる「村社会」です。
ざっくり図にすると、こんな感じ。

 

いい仕事はすべて、すでに活躍してる人にしかいかない。

のです。若手が活躍するのには、その業界の権威に気に入られるか、「じぶん発」で切り開いていくか。そのどちらしかありません。
これは、クリエーティブ業界だけではなく、ビジネスの世界にも共通にして言えることだと思います。

若手が、てっとり早く「いい仕事」をするためには、「いい仕事」が集まる有名クリエーターに気に入られるのがいちばん早い。
若手で「こんな仕事やりました!」という華々しい仕事は、たいてい有名クリエーターがCD(クリエーティブ・ディレクター)とやっている仕事です。

ぼくも、そんな華々しいクリエーティブ人生を歩めればよかったのですが、「コミュ障、権威嫌い、転局者」の三拍子がそろっていたので、いい仕事どころか、そもそも仕事もない状態でした。

とくにぼくはクリエーティブ以外の部署から、クリエーティブ局に異動したので(電通ではそれを「転局者」という)、最初の一年間半はほぼ仕事がありませんでした。ひどいときは一週間に一回くらいしか打ち合わせがない、まさに売れない芸人状態。

デスクに座っていても情緒不安的になり、意味もなく新宿御苑に行き、コロコロと芝生を回り続けるという、怪奇行動を始めてしまう始末。※ちなみに新宿御苑の芝生は、服について取れなくなるのでお気をつけください

そこで仕方なくはじめたのが、以前のブログでも紹介した「コピーライティングシステム」の開発と、今回紹介する「じぶん発のデザイン論」です。
あなたの脳にも移植できる「コピーライティングシステム」公開!

みずから課題をみつけ、新しい仕事をつくる。

じぶんでつくった仕事で結果をだすと、それが名刺となって、つぎの仕事がやってくる。電通にいた後半三年間は、常にじぶんがやりたい仕事に溢れている状況でした。いいのか悪いのか、じぶんで仕事をつくればつくるほど、どんどん「圏外」にむかって突き進み、気がついたら夫婦で電通をやめていました。
いまは電通という看板を失ってからでも、仕事が来る状況になっています。仮に目の前の仕事をすべて失っても、そんなに怖くはありません。「クリエーティブ(コピーライティング)の技術」を身につけているからだけではなく、「じぶん発のデザイン」という技術を身につけているからです。どんな業界、どんな企業、どんな職種であろうが、「みずから課題をみつけ、新しい仕事をつくる」ことさえできれば、自由を獲得し、じぶんの人生を歩んでいけると感じています。
今日はそのためのプチ方法論をご紹介します。


「じぶん発のデザイン論」の中身とは?

「じぶん発のデザイン論」は、ひとつのシートを使用するだけで習得ができます。

 

「じぶん発のデザイン論」は3つの要素にわかれています。


①課題の発見力
②コンセプトデザイン力
③ビジュアルデザイン力

文字にすると難しそうにみえるのですが、じつはとても簡単で、学生でもすぐに実践できます。ひとつひとつ紐解いていきます。

①課題の発見力

世の中でイケてないものや、スポットライトがあたっていないものを探すだけです。たとえば、以下のようなもの。
・昔からあって、ずっと変わらないもの
・昔は流行っていたのに、最近は廃れたもの
・みんなが深く考えたことがなさそうなもの
例)たとえば「輪ごむ」がイケてない、とテーマを決めたとしましょう。

②コンセプトデザイン力

選んだモノやサービスの存在意義を変えてみるだけです。
より人から愛される価値、より社会から求められる価値とはなにかを考えてみます。
「いままでの価値A → これからの価値B」

例)例えば「輪ごむ」の存在価値をこのように変えてみます。
いままでの輪ごむの価値「ものをとめるもの」→あたらしい輪ゴムの価値「ものをありがたく見せるもの」

③ビジュアルデザイン力

選んだものの存在価値が「A→B」に変わったときに、未来がどんな世界になるか、妄想をビジュアルや、ことばにします。

じつはこれは、KOKUYOから発売されている「和ゴム」という商品です。
KOKUYOの社員が開発したものではなく、デザインコンペで一般の方が企画し、それがKOKUYOから商品化されたもの。歯磨き粉だって、ふろしきだって、なんでもよいのです。いまスポットがあたっていないいもの、いけてないものを探し、新しい存在価値を与えてあげること。

そして、それを実現できる企業に自主提案にいくことで、新しいプロジェクトや仕事につがっていきます。「じぶん発」でデザインを行えば、世の中のありとあらゆるものが、じぶんのコンテンツになります。そして、じぶんのつくりたい未来をつくることができるのです。


「じぶん発のデザイン論」への学生たちの反応

高校や大学の学生に、「じぶん発のデザイン論」シートを使って考えてもらいました。數十分で考えてもらったのですが、レベルの高いものが多くあり、そのいくつかをご紹介します。

 

シュシュを「ただ髪を結ぶもの」から、「髪に栄養を与えるもの」として進化させる。とてもよいアイデアですよね。いま美しくいるだけではなく、未来も美しくいるための「新しいファッショングッズ」になっています。ネーミングも考えて、美容メーカーに提案にいけば、商品化などもありえるかもしれません。

 

傘を「雨を防ぐもの」から、「手のツボをマッサージするもの」として進化させる。しかも、正しく持つと、ツボを刺激されるだけではなく、横持ちする人も減るという、社会課題を解決する良いアイデアです。

 

本を「水や汚れに弱いもの」から、「水に濡れることで、コンテンツの内容が変わるもの」 として進化させる。 お風呂専用の絵本など、新しいジャンルの本も開拓できそうです。

 

ふろしきを「ものを包むもの」から「個人を主張したり、何かを区別するもの」に進化させる。学校教育でも使えそうですし、空港でスーツケースを区別する目印グッズ(かつ荷物入れにもなる)などにも展開できるかもしれませんね。いろんな使い方や、展開の仕方が考えられそうです。

 

参加者の学生からの感想も、抜粋で紹介します。

 

日本の教育では、「問題を解決する技術」や「クリエーティブの技術」は教えても、「じぶん発で仕事をつくる技術」は教えていないことが多いと感じています。デザインやアート系のようなものづくりを学ぶ学生さえも、ついつい受注体質になりがちだなあと。数回のワークショップを通して、以下のように教育の概念が変わると、じぶん発で人生を切り開いていける人が増えるのではないかと考えています。

 

●いままでの学校教育

日本の教育は、学校から「課題」が出されて、それを解くというスタイルが多い。課題は、先生が用意してくれるものという「受注体質」になっている。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

●これからの学校教育

じぶんがつくりたい未来に対して、自ら課題をみつけ、仕事をつくること。それを実現するために、大学や教授を使い倒していく「じぶん発体質」に。

デザインやクリエーティブとは、課題解決のスキルです。課題解決のスキルだけではなく、「課題を発見する技術」も習得すること。それがこれからの時代を、じぶんらしく生き抜く力になるのではないでしょうか。


社会人にこそ使える「じぶん発のデザイン論」

「じぶん発のデザイン」は、商品開発、サービス開発、新しいプロジェクト開発など、さままな業界や領域で活用できると思っています。私が、自主プレからつくった仕事や、担当した仕事で簡単に紹介します。

商品開発につかえる

こどものアルバムを、「写真や映像を残すもの」から、「ことば」を残すものに。夫婦で始めた「こどものことばアルバム」プロジェクトですが、メーカーさんを巻き込み、この春、全国のロフトなどでグッズが発売されました。グッズ紹介のサイトはこちら

サービス開発に使える


サッカーゲームを、「遊ぶゲーム」から「新しいサッカーメソッド」に。元プロサッカー選手と、ゲームを活用した、新しいサッカーメソッドを開発。全国でイベントを実施した。

新しいプロジェクト開発に使える


バレンタインを、「好きという気持ちを伝える日」から、「好きを考える日」に。これは、「“好き”に変はない展」という、私がゼロから立ち上げた展覧会プロジェクトです。初年度の2015年は、Yahoo!パートナーや、協賛企業3社をつけて実現。「じぶん発のデザイン論」は、モノやサービスだけではなく、新しい記念日や活動をつくることにも活用できます。

 

今回のブログでは、夫婦で活動している「じぶん発のデザイン論」を紹介してきました。あらゆるもの・サービスの概念は、世の中が変化するにつれ、廃れていく不健康になっていきます。だからこそ、いけてないもの、スポットライトがあたっていないものの存在価値を、再びデザインしていく必要があると。

そして、どんな業界・どんな職種に関わらず「じぶん発」で切り開いていけば、やりたい仕事を、やりたい人生を切り開いていけるとも感じています。

今回紹介した「じぶん発のデザイン論」は、高校・大学・専門学校向けに、引き続き行なっていきます。
講義の依頼などは、お問い合わせからよろしくお願いします。

圏外コピーライター 銭谷侑