家事はアートだ / 育休9週目

家事はアートだ 育休9週目

3人の怒涛の日常が流れていく。


夕方、息子がグズる。妻、授乳をはじめる。
今しかない。洗濯物を畳み終わったぼくは、お風呂へと向かう。浴槽を洗い、お湯をためはじめる。ついでにベビーバスも洗う。息つく暇もなく、つぎは台所へ。息子の薬をお湯に溶かし、哺乳瓶へ入れる。

妻、もう片方の乳房に選手交代。
ぼく、そのタイミングを狙って、薬を渡す。
息子、薬が苦いのか、渋い顔で飲みはじめる。

ぼく、すぐに台所にUターン。
ご飯を湯煎し、レトルトの豚汁スープをレンジで温める。納豆用のネギを、ザクザクと切っていく。醤油、スプーン、箸をダイニングテーブルにテンポよく並べていく。

どんどんゾーンに入っていく。覚醒していく。
じぶんが個の意志で動いているというより、もっと大きな力に動かされている浮遊感。

息子、妻、調理器具、食器、畳、空気―――家を構成するあらゆるもので、ひとつの音楽を奏でているような感覚。そんなすべてが調和したドタバタ協奏曲が絶頂を迎えようとする直前。


「お風呂がわきました」「チーン!」

湯沸かし器と電子レンジが同時に音色をあげる。

ファビュラス!「今日はこの音を聞くために家事をしていたのかもしれない」偶然の気持ちよさに悦に入っていると・・。


「ブブブブぅ」
息子のおむつから、盛大なファンファーレが鳴り響いた。
ぼくらの怒涛の日常は、まだまだつづく。

「ウソみたいだろ。こう見えてオレ、すごく幸せなんだぜ」
こどもを寝かしつけた深夜、ボロ雑巾みたいに仕え果てたぼくから、しぜんと滴り落ちたことば。思わず、夫婦で頬をゆるめた。

こどもがいる生活が、こんなに大変だとは。
2オペでも何とかぎりぎり回している状態。もし男性で育休をとるか迷っている人がいるのなら、「必要」だし、仕事の都合がつく限り取得してほしいなと思う。

その大変さを上回るくらい、楽しいから。


©︎kengai-copywriter 銭谷 侑 / Yu Zeniya
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