わが家の小さな隊長は、「ただいま」じゃなく「とおと、いくよ!」と言って帰ってくる。
息子がこども園から帰宅したあと、晩ごはんまで虫とりをするのが、ここ数週間の日課。どんなに暑くても外に出るといってきかず、俺はハンター要員として駆り出される。
最初はバッタや小さな蝶くらいしかとれなかったけれど、だんだんと腕が上がり、セミ、クロアゲハ、トカゲなど、毎日虫かごがぱんぱんになるほどとれるようになった。
コツは、木のようにたたずみ、風のようにすくう感じ。あらこの感覚、どこかで覚えがあるなと考えていたら、小学生の学芸会で木の役だったのを思い出した。今さらになって意味があったのだと膝を打つ。
そして先日、息子が生まれて初めて、自分でトンボを捕まえた。
(小さな蝶やバッタはたくさん捕まえていたけれど、大物のトンボは初めて!)
網のなかに紫のトンボがかかった瞬間、親子ともども、腹の奥のほうから「うぉー」と雄叫びが出た。いや、お腹よりももっと底。地面のほうから、わき上がってくるような声だった。
ことばになるより先に、身体のほうが知っているようなもの。
きっと俺が汗水たらして追っているのは、ことばでは捕まえきれない、ことばの根っこのようなものなのだと思う。
―なんてことを考えていた、その横で、数匹のセミが「ジージー」と鳴き暴れる虫かごを持った妻がぽつり。
「夏を閉じ込めてる感じがするね!」
ああ、そのことば、俺が捕まえたかった。
©︎kengai-copywriter 銭谷 侑 / Yu Zeniya
